Collection of essays – 田中実

天国の「競技長」へ

 

essays_photo_minoruどうだい、慎ちゃん。

そろそろ、そっちの暮らしにも慣れてきた頃だと思いますが、もしかして、また、誰彼かまわず、説教したりは、してないよね・・・・、まさか・・・・(笑)

先日、慎ちゃんが、まだ現役リバリだった頃に、かかってきた電話のことを思い出しました

田中は、「あっ、ゴルフのお誘いね!」と思っていたのですが、内容はなんと! 「FSWで、オフィシャルやりませんか?」って・・・・・・。

もちろん、田中には、オフィシャルの経験も無く、「イヤだ!イヤだ!!」と、言っているのに無理やり召集(笑)。結局、数人のレーシングドライバーが、ド早朝の富士チャンピオンレースのオフィシャルミーティングに強制召集されていました。

そこで、慎ちゃんが言ったこと、いまでも覚えてるなぁ~。

「あの・・・、私たちレーシングドライバーは、オフィシャルのみなさんに不満があります。

いつも思うのですが、クラッシュしても、なかなか助けてくれないし、トラブル後の指示も、グラベルからの救出も的確じゃない」

「でも、これらは、ドライバーサイドからの一方的な意見であり、私たちは、みなさんがいないと、イザというときには、間違いなく助かりません!」

「だから、今日は、我々レーシングドライバーがオフィシャルを体験することによって、システムやルール、そして、みなさんの気持ちや環境を肌で感じ、今後どのように協力し合えば、我々ドライバーが、みなさんに助けていただけるか、そして、モータースポーツが、より安全なスポーツになるのかをオフィシャルサイドから感じるために来ました」って・・・。

いや~、正直、ビックリした。

だって、長い間、レーシングドライバーやっていて、オフィシャルさんへのクレーム、そして、オフィシャルさんからのクレームは、山のように聞いたことがありますが、それを根底から本気で改善しようとしている人、田中は初めて見ましたからね・・・。

(いや~、あのときの慎ちゃん、マジでかっこ良かったよ!)

自分の立場からだけの視点で、不平、不満を言うのではなく、命を守るために、お互いの立ち位置を確認した上で、協力し合うという考え方は、大病によって命の大切さを身をもって体験した、いかにも、慎ちゃんらしい言動でしたね。

そして、この「行動力」は、やっぱり、山路慎一でなければ、できなかったことの一つであり、その後、現役を引退し競技長となる大きな「意義」や、「理由」になったのではないかと、私は一方的に思っています。

だから、慎ちゃん・・・・・、

これからも、慎ちゃんのスピリットが、ドライバーやオフィシャルのみなさんに引き継がれ、モ-タースポーツが、安全でエキサイティングなスポーツであり続けることを天国からシッカリ見守って下さいよ! 「競技長!!」

田中ミノル